こんな日には

 

 学食の隅で一人、Aランチを食べる。
 たまには一人もいいな。
 ……こんな日には、特に。

 


「涼ちん、ひとり?」
 マネジの真奈美がトレイを横の席に置いた。
 高校の時からの付き合いのせいか、女友達の中では一番気が許せる子だ。
「バカジ君は一緒じゃないの?」
「…………」
 箸でスッと斜め前方を差すと、真奈美は「あ〜」と納得したように俺の隣に座った。
「陣ちゃんかぁ」
「そ」
「いつもは三人で食べてたりするのに、どうかしたの?」
「なんか居たたまれなくてさ」

 


 真奈美の言う通り、いつもなら一緒に食べてる。
 しかし、今日は朝から一緒に食べる気が失せていた。
 朝一番に、ムカつくくらいの笑顔でバカジが。

 


「今日のお昼、陣が作ってきてくれるんだっ」

 


 なんて言ってきたら、ただでさえ低血圧な俺がプチッと来るのも無理はないだろ!?
 普段は温厚な俺も、基本的に朝は不機嫌なんだよ。
 だいたいなんで陣がバカジの弁当なんか作ってんだよ!?
 突っ込みドコロが多過ぎて、突っ込む気も起きないけどさ。

 

 


 真奈美は俺の皿に、俺の好きなミニトマトを入れてくれた。
「涼ちん、これ食べて元気出しなよ」
「さんきゅ」
 遠慮なくミニトマトを口に入れる。
 あ〜〜〜、うまいっ。癒されるなぁ。
「たぶん、私もあの中には入れないから」
 ふふっ、と乾いた笑い。
 真奈美の目線には、手作り弁当ではしゃいでいるだろうバカジ達の姿。
「わかってくれて嬉しいよ」
「わかりたくないけどね」
「そうだよなぁ」
「そうだよねぇ」
 はぁっとため息をついたのが同時で、顔見合わせて笑ってしまった。
「なんか飲む?奢ってやるよ」
「ありがと。レモンティがいいな」
「了解」

 


 同じ気持ちをわかってくれる奴がいるって、こんなに嬉しいモンだったんだな。
 長年共にした仲間がいるっていいな。
 飲み物買いに行きつつ、ちらっと噂の二人を見る。

 


 ……陣、お前キャラ変わってるぞ。

 


 きっと真奈美も同じ事を思うだろうな。
 レモンティとコーヒー牛乳を買って、俺は同志の待つ席へと戻った。

 


 こんな日には、一人じゃなくて同志といるに限る。

 

end