付き合ってんだよな、陣と。
お互い「好き」って言ったんだから、付き合ってるんだよな、俺達。
だから、こう思っても変じゃない。
―――陣とキスしたい、って。
一緒にご飯食べてても、何気ない話してても、俺の視線は陣の口元を追っちゃうんだ。
陣の唇は柔らかいのかな〜?
それとも、ちょっと堅いのかな〜?とか。
そんなコトばっか考えちゃって、そろそろ想像だけじゃ物足んない。
我慢の限界ってやつ。
でもさ、どうせだったら初めてのキスは大切にしたいよな〜。
せっかく大好きな奴とするんだもん。
ドラマとまではいかなくても、すっごいドキドキしちゃうようなキスがしたい。
「バカジ、お前ウザイ」
「う?」
「人の顔見過ぎ」
「……、あ」
慌ててテレビに視線を戻すけど、やっぱり隣にいる陣が気になって仕方がない。
う〜〜〜、やっぱテレビより陣を見てたいっっ。
陣にバレないように見ればいいんだよな。うん。
顔は動かさずに、目だけ陣の方を見ようとした、ら。
「…………!!」
陣の視線とぶつかって、あえなく撃沈。
っちゃ〜〜〜、ダメじゃん。
視線をずらしたら、陣の呆れたような溜息が聞こえた。
「何か言いたい事があるなら言え」
……言えるわけないじゃん。陣とキスしたい、なんて。
「俺に隠し事するのか?」
「なんも隠してねーもん!」
……うそっぱちだけど。
「本当か?」
「じ、陣……っ!?」
俺に覆いかぶさるような体勢で、陣が詰め寄ってきた。
今はその体勢はヤバイんだって……!!!
陣の匂いに、頭くらくらする。
陣の唇が近くにあるって思うだけで、頭が爆発しそうになる。
あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、もうダメ。我慢は性に合わない。
「陣っ!」
「……なんだ?」
「キスさせろっ!」
「…………はぁ?」
「陣とキスしたいんだもんっ!」
「それでさっきから俺の顔ジロジロ見てたのか」
こくこくと何度も頷く俺は、きっと顔が真っ赤になってる。顔が熱くて湯気出そうだ。
それなのに、陣は普通の顔してる。
ず、ずりぃ……
「そういう顔も出来たんだな」
「うぇ?」
どういう顔してんの、俺?とか考えてたら目の前がすっと暗くなって、ふにって感触がした。
唇、に。
キスしてる、って気が付いたのはだいぶ経ってから。
目をつぶってなかった、とか。
俺からじゃなくて陣からキスしてきた、とか。
後から考えるとオイオイってカンジだけど、キスした後の陣が見たことないような顔して笑ってるの見たらどうでもよくなった。
―――そんな顔、出来たんだ。
ドキドキよりも、嬉しいが勝ってた初めてのキス。
陣の肩に寄りかかりながら、次は俺からキスしてやるぞ、とこっそり思った。