「あっちー…」
猛暑警報が出ためちゃくちゃ暑い日。
熱中症予防とかで、監督が午後からの練習を休みにしてくれた。
よっしゃ!これは突撃するっきゃない!
「どうする、バカジ。カラオケでも行くか?」
「俺、帰るっす!熱中症になったら困るし!」
「はぁ?カラオケで熱中症??」
「じゃ、お先でーすっ!」
せっかく更衣室でシャワー浴びたのに、ちょっと走ればすぐにまた汗がだらだら流れてくる。
でも歩いて行ったら、その間にいなくなっちゃうかもしんない。
そう思ったら汗が飛び散ろうが何しようが走る足は止められないのだ。
向かう先は、自宅じゃない。
もうひとつの、俺の帰る場所。
「なんだ、その汗は!?ちゃんと水分補給したのかっ?」
ドアが開いた瞬間に現れた怒りの形相。
その顔も慣れたし。全然平気だし。
「へへっ、来ちゃった〜」
「答えになってない。熱中症になったらどうするんだ」
「さっすが、陣!大当たりぃ〜!熱中症になったらダメだからって、練習休みになったんだ」
「……いいから、水分取れ。それからシャワー浴びろ」
「ほーいっ」
水分ぐびぐび取って、本日二回目のシャワー浴びた。
さっぱりして出てくると、陣がはぁと溜息ついた。
それも慣れたし。全然平気だし。
「お前なぁ、来る時は連絡しろよな」
「走ってたから、電話すんの面倒だったんだもん」
「これからバイトだぞ」
「待ってるからいいよ」
「帰りは夜遅いぞ?」
「大丈夫。今から寝たら夜になっちゃうから」
「…………」
「ねぇ、陣!アイス食べていい?」
「勝手にしろ」
「うん、勝手にする〜」
冷凍庫を開けると、俺の好きなアイスがちゃんとストックされてた。
へへっ、さっすが陣。
こういうマメなトコも大好き。
「いっただきまーす!」
袋をばりっと開けて、ソーダ味の棒アイスをぱくり。
うまい、やっぱ夏はコレに限るっっ!
「行ってくるぞ」
「え、もう行っちゃうの?」
「バイトだって言ってんだろ」
「う〜〜、わかってるよ。言ってみただけだってば」
「部屋散らかすなよ」
「へーき!アイス食べたら寝るし」
「……バカジ」
「う?」
陣が近付いて来て、なんだろ?って思ったら腕を持たれた。
ぺろ、っと。
手首に舌の感触。
「早く食わないと、溶けちまうぞ」
「〜〜〜〜〜〜〜!?!?!」
陣は口元だけ笑って見せて、もう一回俺の手首?アイス?を舐めた。
それはダメだし。全然慣れないし。
心臓バクバクしちゃうし。
俺の熱でアイスが全部溶けちゃいそうだってば。
真夏の陽射しよりも、陣のぺろっの方が熱中症になりそうだ。