メールで遊んじまえ編

 

 

 う〜う〜唸りながら、部室の隅で携帯と格闘してる奴がいる。
 おもちゃ発見。

 


「なーにやってんだ?」
「う?メールっす」
 加地の手元を覗いてみりゃ、まだなんも打ってないメール画面。
「ね〜、早島先輩。ビックリするようなメールって、どうやればいいっすかね?」
「ビックリって、なんだそりゃ」
「俺のメール読みずらいとか言われるから、なんかすっげーの送ってビックリさせたいんすよ!」

 


 確かに平仮名オンリーの加地のメールは読みずらい。
 最初もらった時は小学生から来たかと思ったくらいだ。
「誰に送るんだ?」
「陣…あ、友達ッス」
 その名前を聞いて、ピンと閃いた。

 


「貸してみ。そいつをビックリさせりゃいいんだろ?」
「どうやるんすかっ?」
 加地は何の疑いもなく、俺に携帯を渡してきた。
「メール画面からカメラを起動させて」
「おわっ、そっからもカメラに飛べるんすか!?」
「そう。ほら、こっち向け」
「ういっす!」
 加地に顔を近付けて、俺も画面に映り込む。
「よし、ピースして笑え」
「ういっすっ!」

 

  パシャッ

 

「よし、これをメールに添付してっと。デコメもつけてやるか」
「でこめ?」
「さては加地、知らねぇな。よし、俺に任せろ」
「早島先輩、すごいっすね〜」

 


 加地は素直に感心してる。
 俺に携帯を渡したのが運のつき。
 可愛い後輩程いじめたくなるってなもんだ。

 


 件名・o(*^O^*)O
 本文・早島先輩といっしょだよ

 

 

 そんで、デコメはキラキラした〈らぶらぶ〉ってやつをくっつけて、っと。
 俺の趣味が疑われそうだが、やるならこのくらいベタにやんねぇと面白くねぇ。

 


「ほら、出来た。このアドレスに送ればいい?」
「っす!」
 加地が画面を見る前に、送信っと。
「これなら、友達もビックリするぜ」
「早島先輩って、やっぱすごいっすね〜」
「まあな。よし、外周行くか」
「行くッス!」

 


 携帯を加地のカバンにしまわせて、さっさと部室を出る。
 ……あのメールを見た奴の反応見てぇな。
 加地にはバレないように、こっそり笑う。
 俺にガンつけた仕返し、受けてもらわないとな。

 


 俺はやられたらやり返さないと気が済まない性分でね。

 

 

end