足の爪

 

 

「真奈美〜真奈美〜」

 


 競技場の隅、ウチの大学の集合場所に、バタバタとバカジくんが走ってきた。

 


「サージカルテープ、かして」

 


 …
 今、物凄くイヤな記憶がよぎった。

 


「今度は、何?」
「だから、サージカルテープ」
「テープ?怪我でもしたの?」

 


 中身が大した事なくて、安心。
 テープならこっちの寿命が縮むような事もないよね。

 


「うー爪が、ひっかかってさあ」
「爪?爪切りもあるよ?」

 


 テープをわたしてから、爪切りも出そうとしたら、バカジくんはとんでもない事を言った。

 


「勝手に爪切ると、陣に殴られるから、いい」

 


 はい?
 何で陣ちゃん?
 しかも、怒られる(多分陣ちゃんがバカジくん殴るって、そういう事でしょ)って、何?

 


「何でって聞いて、いい?」
「う?この間、目の前で足の爪切ってたら『深爪したら、足によくない!巻爪作るな!オレがしてやるから、さわるな!』って」

 


 そんときに応急処置教わったんだ、なんて。
 鼻唄混じりにバカジくんは、足の爪部分にテープを巻いていく。
 あの。
 今、とんでもない事聞いた気がする。
 陣ちゃんが?
 あの、陣ちゃんが、バカジくんの足の手入れ?
 誰か解説して欲しいなあ…って、周りをみたら、涼ちんがやれやれって顔をしてて。
 早島先輩がお腹抱えてわらっていた。

 

 

end